Vol. 9 ハバチヤドリヒメバチ亜科 Sphinctini
Tribe Sphinctini, Subfamily Tryphoninae (Family Ichneumonidae)
2020年5月29日更新 渡辺恭平
本族はハバチヤドリヒメバチ亜科の中でも特異な形態を持つ一群で、イラガに寄生することが知られていますが、稀にしか得られないため、国内での生態は謎に包まれています。本族はSphinctus属のみを含み、国内には2種が分布していますが、少なくとも3種は不明種が得られています(2020年5月29日追記)。頭盾前縁は突起を持つ点(図A)、後脚脛節棘は1本である点(図B)、腹柄を持ち、後体節は先端に向けて急激に丸くなる点などで識別できます。
族への検索表は寄生蜂のリストと写真を参照ください。
日本産種の検索表
(Kasparyan, 1992, 1993を基に作成。2020年5月29日更新)
1.中体節と/あるいは後体節は明瞭な赤色部を有する。
・・・Sphinctus spp.
-.中体節と後体節は黒色で、黄色紋を有することはあれど赤色部は欠く。
・・・2
2.後体節第2~4背板は黒色で、先端の黄褐色帯は前方中央に黄色の紋を持つ。翅はより曇る。産卵鞘は黒色~黒褐色で、先端に向かい幅は均一(図C, D)。
・・・クロムネハバチヒメバチ Sphinctus nigrithorax Uchida, 1931
-.後体節は黒色で第1、2背板はたいてい先端方に黄褐色帯を持つが、第3~4背板は帯を欠き(第3背板に弱く帯が生じることがある)、一様に黒色。先端の帯の前方中央には紋を欠く。翅の曇りは弱い。産卵鞘の形態は様々。
・・・3
3.産卵鞘は黄褐色で、先端に向かい幅が広がる(図E)。後体節の黄色帯の発達はより強い。
・・・コガタクロムネハバチヒメバチSphinctus vitripennis Kasparyan, 1992
-.産卵鞘はより暗色で、先端に向かい幅が広がらない。後体節の黄色帯の発達は弱い。
・・・Sphinctus sp.
参考文献
Kasparyan, D. R. (1992) New East Palearctic species of ichneumonid genera, Idiogramma Först., Sphinctus Grav., and Euceros Grav. (Hymenoptera, Ichneumonidae). Entomologicheskoye obozreniye, 71(4): 887-899. [Entomological Review, 72(6): 95-108].
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