Vol. 10 ウスマルヒメバチ亜科 Banchini

Tribe Banchini, Subfamily Banchinae (Family Ichneumonidae)

2020年5月29日作成　渡辺恭平

族への検索表はリストのページをご覧ください。

Banchiniは適度な体サイズを持つことや、希少種や美麗種を多く含むことからも、人気があるヒメバチで、ヨトウ類など畑地の害虫に寄生する種も含まれます。日本産の本族はWatanabe (2020)で整理されました。ここでは種の画像と、似ている種の区別点を紹介します。また、日本語による手引きは現在執筆中で、出版されたのちに案内を出します。

同定の際には触角の白帯の有無、脚を含む体色、フ節爪の櫛歯、マーラースペースの長さなどが有用である。また、タンコブウスマルヒメバチExetastes komarovi Kokujev, 1904は額にこぶ状の突起があるので、近似種と区別できる。

（似ている種の区別点）

① ナワトゲウスマルヒメバチBanchus japonicus (Ashmead, 1906)とトラフトゲウスマルヒメバチ B. poppiti Fitton, 1985

1．触角鞭節は黒色。T IIIとその側背板は皺により基部方0.5（♀）か全長（♂）が分割される。T II（としばしばT IとT III）は一対の黄色紋と後縁に沿った黄色帯を有する。

・・・ナワトゲウスマルヒメバチ B. japonicus (Ashmead, 1906)

－．触角鞭節は赤褐色みを帯びる。T IIIとその側背板は皺により基部方0.4（♀♂）が分割される。T IからT IIIは後縁に沿った黄色帯を有するが、一対の黄色紋は欠く。

・・・トラフトゲウスマルヒメバチ B. poppiti Fitton, 1985

② ヨコジワウスマルヒメバチExetastes transstriatus Watanabe, 2020、ニシキウスマルヒメバチ E. albimarginalis Watanabe, 2020およびサッポロウスマルヒメバチ E. sapporensis Uchida, 1931

1．T Iの前方と中ほどは明瞭な横皺に覆われる。後脚腿節の長さは側方から見た最大の厚みの5.3–5.7倍。マーラースペースの長さは大腮幅の0.6–0.7倍。

・・・ヨコジワウスマルヒメバチ E. transstriatus Watanabe, 2020

－．T Iは明瞭な横皺を欠く。後脚腿節の長さは側方から見た最大の厚みの6.0倍以上。マーラースペースの長さは大腮幅の0.4–0.6倍。

・・・2

2．T Iの長さは最大幅の1.65–1.75倍。T IIの長さは最大幅の0.7–1.0倍で、広く無点刻。産卵鞘の長さは後脚脛節の長さの0.2–0.3倍。後脚腿節は基部方0.5–0.6が赤褐色で、黒色域と赤褐色域の境界は明瞭に認識できる。小盾板は常に黄色紋を有する。

・・・ニシキウスマルヒメバチ E. albimarginalis Watanabe, 2020

－．T Iの長さは最大幅の2.2–2.5倍。T IIの長さは最大幅の1.2–1.4倍で、細かな点刻に覆われる。産卵鞘の長さは後脚脛節の長さの0.1–0.15倍。後脚腿節は基部方がしばしば赤褐色みを帯びるものの、黒色域と赤褐色域の境界は不明瞭。小盾板は♀において黄色紋を欠くことがある。後体節背板は♂においてしばしば黄色帯を欠く。

・・・サッポロウスマルヒメバチ E. sapporensis Uchida, 1931

③ ジュズヒゲウスマルヒメバチExetastes compressus Watanabe & Sheng, 2018とフクチヤマウスマルヒメバチ E. fukuchiyamanus Uchida, 1928

1．触角鞭節は49–55節からなる。♀の触角鞭節は先端方の節において、長さは幅よりも短いか同長で、数珠状。後脚フ節の第1節は第2節の長さの2.1倍の長さ。T II～T VIIは広く背面が無点刻。前胸背板の襟部は背方中央がほぼ一様に白色。

・・・ジュズヒゲウスマルヒメバチ E. compressus Watanabe & Sheng, 2018

－．触角鞭節は65–79節からなる。♀の触角鞭節は先端方の節において、長さは幅よりも長いか同長で、数珠状にはならない。後脚フ節の第1節は第2節の長さの2.4–2.7倍の長さ。T II～T VIIは広くマット状の表面を有する。前胸背板の襟部はせいぜい背方中央に小さな白色紋を有する程度で、しばしば完全に黒色。

・・・フクチヤマウスマルヒメバチ E. fukuchiyamanus Uchida, 1928

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