Vol. 7 コマユバチ亜科Euurobracon属
Genus Euurobracon, Subfamily Braconinae (Family Braconidae)
Euurobracon属はコマユバチの中でもとりわけ顕著な、識別しやすい一群です。日本にはウマノオバチとヒメウマノオバチの2種が産しており、いずれも里山など、身近な環境で見られます。ウマノオバチは、著しく長い産卵管で著名な種であり、シロスジカミキリに寄生した記録が報告されています(Watanabe, 1934)。最近は、シロスジカミキリが減少したため、見かける機会が著しく減少していますが、一部では目撃例が増加しています。これは、ハチへの関心が高まってきたことのほかに、放棄されたクリ園の増加も考えられます。もう一方の種、ヒメウマノオバチは初夏に飛翔中の個体をよく見ます。ウマノオバチの♂は野外ではなかなか見かけないのに対し、ヒメウマノオバチは♂もよく見かけます。
両種は下記の検索表で識別できます。
1.後翅翅脈Rs脈とM脈の合流点はM脈とR脈の合流点とほぼ同じ位置に存在する(図A,C)。産卵管は体長より明らかに長く、前翅長の4.5倍以上。
・・・ウマノオバチ E. yokahamae (Dalla Torre, 1898)
‐.後翅翅脈Rs脈とM脈の合流点はM脈とR脈の合流点よりも若干後方に存在する(図B,D)。産卵管は体長より短い。
・・・ヒメウマノオバチ E. breviterebrae Watanabe, 1934
日本産の本属を扱ったWatanabe (1934)ではウマノオバチの種小名は”yokohamae”となっていますが、これは誤りで、原記載では”yokahamae”となっていまず。これはおそらくDalla Torreが横浜の綴りを誤ったものですが、命名規約上は問題がないため、”yokahamae”を用いるのが適当です。
特にウマノオバチにおいては、体や翅の黒色部面積にかなりの変異が見られます。従って、下記の画像と色彩が違うので別種、というわけではないことを断っておきます。
文献
Quicke, D. L. J. (1989) The Indo-Australian and E. Palaearctic braconine wasp genus Euurobracon (Hymenoptera: Braconidae). Journal of Natural History, 23: 775-802.
Watanabe, C. (1934) Notes on Braconidae of Japan V. Euurobracon. Insecta Matsumurana, 9: 19-23.
下記の画像をクリックすると大きな画像で見ることができます。