どこでヒメバチに会えるか?

 ヒメバチはとっても身近な昆虫です。植え込みの葉の上はもちろん、モンシロチョウやアゲハチョウを飼育していると、それから羽化してくることがしばしばありますし、ちょっと郊外へでかければ、夜間街灯の光にも多数飛来します。以下に、私がヒメバチに出会いに出かけた場所を例に、ヒメバチを探すポイントをちょっとだけお伝えします。

Photo 1. 神奈川県秦野市弘法山  Diplazon laetatoriusやトウヨウマルヒメバチ、フトマルヒメバチが得られた
Photo 1. 神奈川県秦野市弘法山 Diplazon laetatoriusやトウヨウマルヒメバチ、フトマルヒメバチが得られた
Photo. 2. 神奈川県横須賀市三浦富士 シロモンヒラタヒメバチやシロスジクチキヒメバチが多かった
Photo. 2. 神奈川県横須賀市三浦富士 シロモンヒラタヒメバチやシロスジクチキヒメバチが多かった

Photo 1. Kanagawa Pref., Mt. Koubou-yama

Photo 2. Kanagawa Pref., Mt. Miura-Fuji

 

 上記二つの場所は、都会からも近い緑地帯です。上の写真のような、春から初夏にかけての草原は、ヒメバチの宝庫で、空き地のスイーピングだけでもかなりのヒメバチが得られます。下の写真は、どこにでもありそうな風景ですが、ポイントは2つあり、1つはこの道が山の尾根付近にあり、風が溜まること、2つは木漏れ日が差し、暗い周囲環境との間にギャップができていることです。このような場所を丹念に見ていると、ハチが多く見られます。

Photo 3. 山梨県甲州市大菩薩 両脇のササから多くのトガリヒメバチが得られた。
Photo 3. 山梨県甲州市大菩薩 両脇のササから多くのトガリヒメバチが得られた。
Photo 4. 群馬県丸沼高原(奥日光) ハバチとその寄生者のハバチヤドリヒメバチやマルヒメバチが非常に多かった。
Photo 4. 群馬県丸沼高原(奥日光) ハバチとその寄生者のハバチヤドリヒメバチやマルヒメバチが非常に多かった。
Photo 5. 静岡県本川根町山犬段(蕎麦粒山付近) 右のササからはアシマダラクモヒメバチが多く得られた
Photo 5. 静岡県本川根町山犬段(蕎麦粒山付近) 右のササからはアシマダラクモヒメバチが多く得られた
Photo 6. 北海道札幌市円山(多くのヒメバチの模式産地になっている場所) ホソコ…じゃなくてヒメバチが多かった。
Photo 6. 北海道札幌市円山(多くのヒメバチの模式産地になっている場所) ホソコ…じゃなくてヒメバチが多かった。

Photo 3. Yamanashi Pref., Mt. Daibosatsu

Photo 4. Gunma Pref., Marunuma (Oku-Nikko)

Photo 5. Shizuoka Pref., Mt. Yamainu-dan

Photo 6. Hokkaido Pref., Sapporo-shi, Mt. Maruyama (Type locality of some species described by Uchida, Momoi and some authors)

 

 ヒメバチが最も多い、山地の林道です。ポイントは、①風が溜まる場所(吹き溜まり)で、ハチが休めるササ等があること、②植物の種数が多いこと、③アスファルトで舗装されていないこと、④ある程度湿っていること(沢沿いなどはベスト)などが挙げられます。慣れてくると、道を見ただけでどれくらいヒメバチがいるかわかってきます。

 ウスマルヒメバチ、マルヒメバチ、チビアメバチなどは、木の葉を掬うと多くの種が得られます。

Photo 7. 群馬県片品村花咲 ホシセダカヤセバチがやたら見られた。
Photo 7. 群馬県片品村花咲 ホシセダカヤセバチがやたら見られた。
Photo 8. 群馬県片品村武尊山 シラホシオナガバチやCnastis vulgaris、Xorides sp.などが飛来した。
Photo 8. 群馬県片品村武尊山 シラホシオナガバチやCnastis vulgaris、Xorides sp.などが飛来した。
Photo 9. 山梨県増富,ビワクボ沢 鹿の食害で枯れたモミの大木、シロフオナガバチなどが飛来した。
Photo 9. 山梨県増富,ビワクボ沢 鹿の食害で枯れたモミの大木、シロフオナガバチなどが飛来した。

Photo 7. Gunma Pref., Katashina village

Photo 8. Gunma Pref., Mt. Hotaka-san

Photo 9. Yamanashi Pref., Masutomi

 

 オナガバチやクチキヒメバチなどの食材性昆虫に寄生するヒメバチは、立ち枯れや伐採木を見つけて採集します。貯木場は時に多数のヒメバチに出会えますが、よほど良い場所でないと、得られる種は限られます。珍しい材にくるヒメバチは、偶然の機会で出会うことの方が多いようです。

 材は朽ちてゆくものなので、昨年採れたからといって、また得られるとは限りません。そこがまた面白いのです。

Photo 10. 奄美大島中央林道 一見尾根でよい環境に見えるが、南に行くとこのような場所ではあまりヒメバチが採れない。(ヒメバチに似た虫は採れる)
Photo 10. 奄美大島中央林道 一見尾根でよい環境に見えるが、南に行くとこのような場所ではあまりヒメバチが採れない。(ヒメバチに似た虫は採れる)
Photo 11. 奄美大島湯湾 一見ダメに見えるが、ここでは林縁に沿って沢山のヨコジマトガリヒメバチが飛んできた。
Photo 11. 奄美大島湯湾 一見ダメに見えるが、ここでは林縁に沿って沢山のヨコジマトガリヒメバチが飛んできた。

Photo 10. Amami-Oshima (North Ryukyu), Chuo-rindo

Photo 11. Amami-Oshima (North Ryukyu), Yuwan

 

 ヒメバチは南の地方にいくに従って一部を除き種多様性が著しく減ります。琉球は地球全体で見てはそれほど南の地域ではありませんが、島であるため、環境をよほど選んで採集しないと、一部の種しか得られません。どうやら沢すじが多いようですが、近年の開発により、蜂たちの生息地は著しく減少しているのではないかと思います。