コマユバチ科の形態
頭部
頭部は様々な形態を有するが、特に大きな特徴が現れる部位として、大腮と上唇が挙げられる。大腮は通常の形態(内向き)がほとんどであるが、ハエヤドリコマユバチ亜科では外向きである。上唇はCyclostomeタイプのコマユバチでは大抵凹み、なめらかで、時折ほとんどがつやをもつ(下記のオナガコマユバチ亜科を参照)が、Non-Cyclostomeタイプでは上唇は凹まず、大抵彫刻され、時折大腮の下に隠れる(下記のフチガシラコマユバチ亜科を参照)。
ヒメバチ・コマユバチ両科で別名称の形質
コマユバチ科 ヒメバチ科
Malar suture → Subocular groove (眼下線)
形態用語の主な体系としては、Tobias (1986), Achterberg (1979, 1988)およびShrakey (1993, 1997)がある。
中体節
中体節は基本的にヒメバチ科と共通の部位が多いが、一部別名称がある。
ヒメバチ・コマユバチ両科で別名称の形質
コマユバチ科 ヒメバチ科
Precoxal suture → Sternaulus (胸側溝、中胸側線)
Metapleural flange → Submetapleural carina の突出部
下記に図示していない形質として、前胸背板襟部背面中央のくぼみをpronopeと称する。また、後小盾板に対し後胸背板と称することもある(そもそも、後小盾板は後胸背板の一部)。
翅
翅の用語体系には様々な体系があるが、最も良く使われている体系としてはAchterberg (1979, 1988) による Comstock-Needham system (翅脈の用語体系のひとつ)を改変したものがある。最近では他の体系も良く用いられているが、氏の研究はコマユバチを研究する上で避けて通れないため、この体系については理解しておく必要がある。
コマユバチの翅脈・翅室はヒメバチに比べて、一般に減少・融合が多く、一つの図ですべてを示すことは難しいが、比較的翅脈がはっきりしているフチガシラコマユバチ亜科やコンボウコマユバチ亜科で観察するとわかりやすい。翅脈が融合した際、Achterbergの体系においては、併せて表記する。たとえば、前翅r-m脈を欠き、2M脈と3M脈の境界の判断がつかない場合、2+3-Mと表記する。
分類においては、翅脈の有無はもちろんのこと、翅室の形や有柄、無柄についてもよく用いる。
Achterberg (1979, 1988) における翅室の名称
A: Marginal cell
B1: 1st. submarginal cell
B2: 2nd. submarginal cell
B3: 3rd. submarginal cell (よく2nd. submarginal cellと融合する)
C1: 1st. discal cell
C2: 2nd. discal cell
D1: 1st. subdiscal cell
D2: 2nd. subdiscal cell
E: Costal cell
F: Basal cell
G: Subbasal cell
H: Plical cell or lobe
脚
特に特別な名称等はない。
後体節
ヒメバチ科と顕著に異なる点は、背板の融合が多い点である。融合はしばしば顕著な甲羅を形成する。甲羅状の後体節背板は残りの背板を節の下に収納する。このような形質はコウラコマユバチ亜科が一般的に有名であるが、AcampsohelconinaeやBrachistinaeでも見られる。また、カモドキバチ亜科の一部などでは、背板先端に顕著なトゲを有することがある。後体節第1背板の気門が節片化した部位にあるか、膜質の部位にあるか、後体節第2、3背板の気門が背板のうち、背方の区画(背板・中背板)か、側方の区画(側背板)にあるかは、分類において重要である。
ヒメバチで用いられない用語として、後体節第1背板基部に対する名称があり、下記のように分類される。
Diplope: 明瞭なLateropeとDorsopeが存在し、それらが多少とも接している状態。
Dorsope: 後体節第1背板の前背方の凹みで、多少ともピット状の(凹んだ)構造で、多少とも発達した背側方隆起線と背方隆起線(=中央背方隆起線)の間に存在する。
Laterope: 後体節第1背板の前背方の凹みで、多少ともピット状の(凹んだ)構造で、多少とも発達した背側方隆起線の下、柄側刻の中に存在する。
ヒメバチ・コマユバチ両科で別名称の形質
コマユバチ科 ヒメバチ科
Dorsal carina → Median dorsal carina (中央背方隆起線)