ICHNEUTINAE Förster, 1862 

ハバチヤドリコマユバチ亜科

ハバチキバラコマユバチ Proterops nigripennis Wesmael,1835
ハバチキバラコマユバチ Proterops nigripennis Wesmael,1835

[他の亜科との区別に用いる形態Non-Cyclostome

 小型から中型のコマユバチ。内向大腮。前胸側板の背方縦隆起線は大抵欠く。後頭隆起線は欠く。Epicnemial carinaはしばしば欠く。後体節背板は通常(甲羅を形成しない)。産卵管は大抵短い。翅はしばしば黒く曇る。

 上唇は凹まず、大抵彫刻され、時折大腮の下に隠れる。後翅翅脈m-cuは大抵欠く。後体節第2背板の気門はほぼ常に側背板に存在する。後体節は第23節の間で曲がらない。

主な生態

 Ichneutini族とProteropini族はハバチの幼虫の内部寄生性飼い殺し型単寄生蜂。卵ないし初齢幼虫の成長は寄主が繭を紡ぐまでは遅い。

同定の際の注意

 コマユバチ亜科の♂と一見すると似ている。

(上記解説中の翅に関する名称はSharkey, 1993に従っています)

 

日本および周辺地域に産する属への検索表 ※1

Sharkey & Wharton, 1994を基に作成。[]は新大陸の近似の属との識別点)

1. 翅脈は減少し、前翅Rs脈は翅端に達しない。

・・・2

-.翅脈は完全か、ほぼ完全。前翅Rs脈は翅端に達する。

・・・3

2. 後翅翅脈1Aは不完全で、cu-aと合流しない。[♀の触角鞭節の先端3/4あたりの腹面は2本の幅広く、一定の間隔が空いた縦に走る感覚器を有する。後体節第1背板はしばしば中央が隆起し、常に狭い中央の縦に走るくぼみを欠く]

・・・Paroligoneurus 2

-.後翅翅脈1Aは完全で、cu-aと合流するか、ほぼ合流する。

・・・Oligoneurus

3. 前単眼(中央単眼)は触角挿入孔と同じ水準まで、後単眼(側方単眼)から非常に離れる。幕状骨前腕孔は顕著に深く、幅広い。前翅翅室Discoidal cellは柄をもつ。前翅Radial veinの第2区画は第1区画(区画は縁紋寄りの区画より1, 2, 3と数える)よりも短い。翅は密に暗色の毛を有する。胸側溝(Sternaulus)は発達しない。後翅Rs脈の染色部は翅端付近まで伸びる。[後頭隆起線を欠く。Epicnemial carinaも欠く。中胸背縦斜溝(Notaulus)は強く彫刻されない。後脚付節爪は減少した基部の歯を有する]

・・・Proterops

-.前単眼(中央単眼)は通常の位置(より後方)に存在する。幕状骨前腕孔は通常の大きさで、幅が拡大しないか、顕著に深く、幅広い。前翅翅室Discoidal cellは柄を欠くか、柄がある場合、M脈は縁紋方向で強く外側に曲がる。前翅Radial veinの第2区画は第1区画よりも顕著に長い。翅は疎らで明色の毛を有する。胸側溝(Sternaulus)は発達し、彫刻される。後翅Rs脈の染色部は欠くか、R脈の短い残り(r-m脈よりも短い)のみをもつ。

・・・4

4. 幕状骨前腕孔は通常の大きさで、幅が拡大しない。頭盾上溝(頭盾と顔面を分割する溝)は中央でも深く凹む。頭盾は三角形で、平ら。前翅翅脈1-Mはそれほど明瞭に前方に曲がらない。前翅R脈は縁紋の中央付近から生じる。前翅翅脈SRIは直線状か翅の先端へ曲がる。前翅marginal cellはより狭く(翅脈1-R1は縁紋の長さの0.40.5倍)、先端が半裁断状。前翅翅脈m-cu2-Cu1は直角に交わる。前翅翅脈Cu1bは欠くか、節片化されない。後翅翅脈Sc+R1は曲がる。後翅翅脈cu-aは外斜か、ほぼ直角で、比較的短い。Epicnemial carinaは腹方で欠く。Precoxal sulcusは広くなめらか。♂の後体節第7背板は中程度の大きさで、互いにやや接近する。

・・・Pseudichneutes 3

-.幕状骨前腕孔は顕著に深く、幅広い。頭盾上溝(頭盾と顔面を分割する溝)は中央では浅く凹む。頭盾は横長で、隆起する。前翅翅脈1-Mは明瞭に前方に曲がる。前翅R脈は縁紋の中央より基部方で生じる。前翅翅脈SRIは斜めで、縁紋方向に曲がるか、ほぼ直線状。前翅marginal cellはより長く(翅脈1-R1は縁紋の長さの0.60.9倍)、先端は弓状。前翅翅脈m-cu2-Cu1は鋭角に交わる。前翅翅脈Cu1bは大抵存在し、明瞭に節片化する。後翅翅脈Sc+R1はわずかに曲がるか、直線状。後翅翅脈cu-aは内斜か、半ば直角で、比較的長い。Epicnemial carinaは腹方で存在する。Precoxal sulcusは広く彫刻される。♂の後体節第7背板は小さく、互いに離れる。

・・・Ichneutes

 

1 Tobias (1986, 1995)では族が設定されていたが、Sharkey & Wharton (1994)は系統解析を行い、結果として族を認めなかった。しかしながら、He, Chen & Achterberg (1997)ではSharkey & Wharton (1994)の解析結果に疑問を呈し、族を認めている。その一方で、He, Chen & Achterberg (1997)ではSharkey & Wharton (1994)によって設立された属について族の所属を明らかにしていないため、ここでは便宜上Sharkey (1994)の処理に従い、族を認めない。

2 日本から記録は無いが、台湾などで得られている(Sharkey & Wharton, 1994)。He, Chen & Achterberg (1997)によるとParoligoneurus Oligoneurusの中間の形質を示す種が存在するそうで、これらの属間関係は再検討を要するとされている。

3 日本から記録は無いが、中国から記録があるため、検索表に含めた。

日本産既知種のリスト(2021年版)

 

Ichneutes Nees, 1816

   cultratus Belokobylskij, 1998

 koreanus Belokobylskij & Ku, 1998

   orientalis He & Chen, 1997

 reunitor Nees, 1816 ハバチクロコマユバチ

       costatus (Zetterstedt, 1838) (Microgaster)

       laeviventris Hellén, 1958

       leptostigma Hellén, 1958

 

Oligoneurus Szépligeti, 1902

         Ciliosa Mason, 1969

    Pulchaukia Mason, 1969

 inopinatus Tobias & Belokobylskij, 1981

 

Proterops Wesmael, 1835

      Ichneutidea Ashmead, 1900

      Proteropoides Viereck, 1909

 nigripennis Wesmael, 1835 ハバチキバラコマユバチ