研究していること

寄生蜂類の多様性や多様性形成メカニズム(種分化)の解明に繋がる様々な分野に興味を持ち、ヒメバチ科を中心とした寄生蜂類の分類学(新種の記載などにより”種”を識別可能にすること)と系統学という研究基盤の構築を軸に、それらを利用し形態や生態の進化、生物地理などの研究に取り組んでいます。

 

寄生蜂類の中でも、夜行性、熱帯・亜熱帯地域のグループの研究に特に力を入れており、国内では南西諸島、国外では台湾やインドネシアなどをフィールドに野外調査を行っています。

 

 

進行中のプロジェクト(の一部)

 

国内のみならず全世界の研究者の方々と協力しながら様々な研究に取り組んでいます。特に力を入れて進めている主要なプロジェクトは以下の通りです。

 

A. アメバチ亜科の分子系統学

超保存領域UCEsを用いてアメバチ亜科の高次系統関係、系統地理学的パターンの推定に挑戦します。また、夜行性・昼行性の進化パターンなどの推定を試みます。

(進捗:タクソンサンプリング中-サンプル募集中;研究予算獲得に挑戦中)

 

B. コンボウアメバチ亜科の分子系統

アメバチ亜科同様に高次系統関係の推定、体系の見直しを目指します。また、寄主利用様式、それに伴う形態の進化パターン、系統地理パターンを推定します。

(進捗:共同研究者となって頂く研究者の方々と計画などを調整中;タクソンサンプリング中、珍品が多く難航-サンプル募集中

 

C. ホシアメバチ属の分類・系統・生物地理

ホシアメバチ属は現在700種以上が知られている巨大な分類群です。しかし、清水のこれまでの標本調査、Townes (1971)の推定から少なく見積もっても1,000種を超える種が存在していると考えられます。ホシアメバチ属の著しい多様性の全貌の解明、分散・進化パターンの解明などに挑戦しています。

(進捗:日本産種全体の種に関する論文は投稿中、ネパール産種の分類論文は投稿間近、台湾・タイ・新熱帯・ベトナムなど各地の種に関してはタクソンサンプリングや共同研究者と打ち合わせ中)

 

D. アメバチ属の多様性推定、統合分類

アメバチ属は形態形質の変異が非常に大きいことやヴォルバキアの影響による遺伝子情報の誤った解読のリスクなどから非常に分類が難しい分類群です。日本から10種が知られていますが、現在までに得られているサンプルの形態分類やDNAバーコーディングを用いたクラスタリングにより、少なくとも60種が生息していることが明らかになってきています。今後は日本を中心とした極東アジア及び世界全体においてより網羅的なサンプリングを行い、最新の分子系統解析手法、種の定義技術、画像解析・形態計測学的手法、生態情報などあらゆる手法を統合的に用いて分類学的整理(integrative taxonomy)、多様性の解明に挑戦します。

(進捗:日本産サンプル約300個体の遺伝子解析など実施、依然サンプル不足でサンプリング中-サンプル募集中

 

E. Idiogrammatini族の再検討・分子系統

日本未記録族であるハバチヒメバチ亜科の一群、Idiogrammatini族のサンプルを日本から得ています。それらには形態及びDNAバーコーディングにより3種が含まれていることが分かりました。今後は、分類学的問題がある新大陸の種の再検討、ヨーロッパに分布する未記載種の記載、日本産未記載種の記載などを含めた族全体の整理に挑戦します(カナダナショナルコレクションのAndrew Bennett博士らとの共同研究)。

(進捗:日本産種及び北米産種の塩基配列情報取得済み、日本ではサンプリング地点に大きな偏りがあるため追加サンプリング中-サンプル募集中

 

F. その他(主に記載分類)

a. 主に以下のグループの分類などを行っています。

 ・アメバチ亜科

 ・コンボウアメバチ亜科

 ・ホソチビアメバチ亜科 など、その他、熱帯・亜熱帯のグループ

b. 日本国内各地の地域ファウナの解明にも取り組んでいます。

c. より効率的なサンプリングや特殊な生息環境を利用する分類群のサンプリングのためのサンプリング手法の追及も行っています。

d. ヒメバチ科寄生蜂の世界規模の参照標本コレクションの構築にも取り組んでいます。

 

 

興味がある(今後行いたい)研究課題

 

・夜行性寄生蜂類に対する夜間の人工光(ALAN)の影響の研究

・夜行性寄生蜂類の対捕食者(主にコウモリ)戦略の解明